はじめに
日興証券の投資情報サイト「日興フロッギー!」では、ある個人投資家の成功体験を取り上げ、20代で元手600万円を株式に集中投資し、資産を大きく増やしたケースが紹介されています。(日興フロッギー)
これは一見すると「若いうちに大きなリターンを狙うなら一点集中投資もあり」というメッセージに受け取れますが、成功者の物語だけでは見えない現実のリスクも同時に考える必要があります。
📈 記事で語られる成功ストーリーの魅力
FROGGYの記事で取り上げられている個人投資家(いわゆる “億り人”)は、20代でテンバガー候補のような銘柄に集中投資し、結果的に資産を大きく伸ばしました。(日興フロッギー)
確かにこうした事例は読者の夢を刺激し、投資へのモチベーションを高める力があります。
しかしここにひとつ重要な前提があります──
「成功したから語れる」という側面です。
❗ 一点集中投資の落とし穴:成功しなければどうなるか?
成功例は結果論でしかない
投資において「テンバガー(10倍株)」を引き当てること自体が極めて稀です。その銘柄を見極めたから成功した、という言い方はできますが、
同じ戦略で失敗する可能性も等しく存在します。
たとえば別の投資家でも、有機ELや新興ITに集中したがゆえに損失を抱えてしまったというケースが報告されています。これらは成功例ほど目立ちませんが、集中投資のリスクの現実を示しています。(マネーポストWEB)
最近の株高ブームに乗って株式投資を始めてみたものの、日々の株価に一喜一憂し、どの銘柄を選べばよいか、どんな投資手法が正解なのか、迷い続けている人もいるだろう。株式投資で億超えの資産を築いた「億り人」のなかにも、そのような“投資迷子”の長いトンネルを経験してきた人は少なくない。その1人である、『トイレスマホで「無限10倍株」 3年9カ月で5975万円を稼いだ投資術』(KADOKAWA)著者のテンバガー投資家X氏は「15年にわたり負け続けた過去がある」と打ち明ける。
大きな成長が見込めるIPO(新規公開株式)銘柄を上場後に購入する「IPOセカンダリー投資」と呼ばれる手法を駆使し、561万円を約5年8か月で10億円に増やした実績を持つテンバガー投資家X氏だが、その投資遍歴は失敗の連続だったという。
「私が投資を始めたのは、大学1年生だった2003年。それまでの貯金で手元に60万円ほどの余裕資金ができたので、以前から興味のあった株式投資に挑戦してみることにしました。当時の私は『新しく画期的な技術を持つ企業なら業績が飛躍的に伸びて株価も上がるはずだ』と考え、有機ELという新しいディスプレイ技術に注目。有機EL関連の銘柄に投資しました」(テンバガー投資家X氏。以下、「」内は同じ)
世間的にも有機EL関連銘柄は一時ブームとなったが、期待ほど株価は伸びず、最終的には日本メーカーが有機ELの量産化に失敗して撤退した。
- リーマン・ショックの大暴落も経験
その後も、ITバブルの名残を頼りに新興のIT企業に投資をしてみたものの、購入した途端に上場廃止となったり、増資をされて株価が大幅に下落したりするなどの憂き目に遭い、トータルでは大損するという結果に終わった。加えて、2008年のリーマン・ショックでの大暴落も経験した。アルバイト代も投入して学生時代はトータルで100万円ぐらい投資したが、卒業する頃には半分も残っていなかったという。
社会人となってからも、月々のお小遣いを原資にコツコツと株式投資を続けてきたというテンバガー投資家X氏。本業の仕事、子育てで多忙の同氏はトイレ休憩中の隙間時間を利用してスマートフォンでトレードを続けてきたが、運用成績は少しだけ上がったり少しだけ下がったりでドラマ性に乏しく、水洗トイレに流したいレベルの「うんこパフォーマンス」だったと振り返る。
「2012年末から2018年秋頃まで続いたアベノミクス相場の大波にも、見事に乗り損ねました。というのも、アベノミクス相場が始まる直前に大型株への投資で失敗した経験から、大型株への興味を失っていたのです。
当時の私が投資していたのは、時価総額の小さい企業や創業して間もない新興企業。当時の上昇相場を支えていたのは主に外国人投資家で、彼らは大型株にばかり投資するので、私が保有していたような中小型株や新興企業はほとんど上昇相場の恩恵を受けず、日経平均株価がグングン上昇していくのを指をくわえて見ているだけの情けない状態でした」
大きな損はしなかったものの、千載一遇の大チャンスに乗れなかったことで、すっかり自信を失ったテンバガー投資家X氏は、その後にやってきたインデックス投資のブームや、米国株投資ブームにもいまいち乗り気になれないまま見送るうちに、こうした投資スタイルは自分には合わないのではないかと感じるようになったと回顧する。
自分に合う投資法がなかなか見つけられず、試行錯誤を続ける中で出会ったのが、「IPOセカンダリー投資」と呼ばれる投資手法だった。新規公開株式のうち、さらなる大きな成長を見込める銘柄を選別して購入していくというやり方で、資産額は5年8か月で178倍に増えている。
⚠️ なぜ集中投資は危険なのか
価格変動リスクが極めて高い
単一銘柄で資産の大部分を構成すると、株価の変動がそのまま資産全体に影響します。
株価が跳ね上がれば利益ですが、逆に急落すれば資産は一気に削られます。
成功に至るには市場タイミングや運の影響が大きい
いくら銘柄のファンダメンタルが良くても、長期的に値下がりトレンドに入る可能性や、外部ショックの影響を受ける可能性は常にあります。
これは個別株投資の根本的リスクです。
一般投資家の能力差がリスクに直結
学術研究によると、ポートフォリオの最適な銘柄数は投資家の能力によって変わり、スキルの低い投資家ほど分散されたポートフォリオの方がリスク調整後の成績が良いという分析もあります。
🛡 分散投資という別解の価値
一方で、分散投資はリスク低減という本質的なメリットがあります。
これは単なる安全策ではなく、資産配分理論として多くの専門家が長期運用に推奨している手法です。
分散投資の場合、ある銘柄が下落しても他の銘柄や資産クラスで損失を補う効果が期待できます。
🤔 成功例の裏で起こりうること
例えば、同じように集中投資を選んだ投資家がリーマンショック級の暴落に見舞われたらどうでしょうか。
多くの資産を一銘柄に入れていたら、即座に資産が大幅減少・退場となるリスクもあります。
成功例は「うまくいった過去」の振り返りです。
しかし、投資戦略を検討する際に大切なのは「成功しなかった場合のシナリオ」を想像することです。
📌 まとめ:一点集中の是非を正しく評価する
日興フロッギーの記事は成功者のリアルストーリーを伝える良いコンテンツですが、
読者の資産形成にとって「一点集中が正解」という結論をそのまま受け取るのは危険です。
✔ 成長銘柄への投資は確かに魅力的
✖ しかし成功例だけで戦略を決めてよいわけではない
✔ リスク管理(分散・許容損失)は資産形成の基本
✖ 元手を失う可能性を見落としてはならない
投資は未来を予想する行為ではなく、不確実性に備える行為です。経験談を参考にしつつ、自分なりのリスク管理戦略もしっかり考えましょう。





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