― 行動ファイナンスからのヒント ―
私たちはお金や投資の判断をするとき、必ずしも合理的に行動しているとは限りません。心理的な偏り(=バイアス)が、知らないうちに意思決定に影響していることがあります。
このような「感情や思い込みが投資行動にどう影響するか」を研究する分野が行動ファイナンスです。これを理解することで、より冷静で効率的な資産運用ができる可能性があります。
投資に影響を与える心理バイアスの例
- 群集心理:「みんながやっているから」と考え、冷静な分析なしに行動してしまう傾向。
例:株価が上がっているから慌てて買う、周囲が売っているから自分も売る など。 - 損失回避:利益よりも損失を強く意識してしまう傾向。
例:値下がりした投資商品をなかなか手放せない。
これらは特に多くの人が陥りやすく、資産運用の結果に大きく影響します。
簡単な心理実験
問題1 あなたはどちらを選びますか?
① 確実に海外旅行券(50万円分)をもらえる
② 50%の確率で100万円分の旅行券をもらえる
問題2 あなたはどちらを選びますか?
① 確実に50万円分の旅行代金を自腹で払う
② 50%の確率で100万円分の旅行代金を自腹で払う
結果を想定すると、問題1では①を選ぶ人が多く、「得られる利益は確実に手にしたい」という心理が働く傾向があります。
一方、問題2では②を選ぶ人が多く、「損失を避けたい」という気持ちから、あえて不確実な選択肢を選ぶ傾向が見られます。
このことから、人は利益の場面ではリスクを避け(リスク回避)、
**損失の場面では損失を避けようとして逆にリスクを取る(リスク追求)**ことがあると考えられます。
投資でよくある「心理のクセ」とその行動例
No. | 心理のクセ | 投資での行動例 |
---|---|---|
1 | 自信の持ちすぎ | 「自分の判断は正しい」と思いすぎて、リスクを無視して取引する。 |
2 | 後悔したくない気持ち | 「損したくない」という思いが強くて、損切りできない。 |
3 | 損のほうが大きく感じる | 同じ金額でも、利益より損失のほうが強く心に残る。 |
4 | お金に色をつける | 「これはボーナスだから…」など、お金の用途で判断を変えてしまう。 |
5 | ありえないことを過大評価 | めったにない出来事を、必要以上に心配する。 |
6 | 選べない症候群 | 情報が多すぎて、どれを選べばいいか決められなくなる。 |
7 | みんなと同じ行動をしてしまう | 自分の考えがあっても、周りの多数派に合わせてしまう。 |
8 | 持っている物に執着 | 自分が持っている株や資産を実際より高く評価して、売れなくなる。 |
9 | 基準に引きずられる | 関係ない数字や情報に判断が影響される(例:「高値覚え」)。 |
10 | 都合のいい情報だけ信じる | 自分の意見に合う情報だけを信じ、反対の意見を無視する。 |
11 | 現状のままが安心 | 条件が悪くなっても、面倒だから変えずに現状を続ける。 |
12 | 短期利益を追いすぎる | すぐに利益を得ようとして失敗する。ダイエットが続かない理由にも似ている。 |
自分の行動をチェックする
行動ファイナンスを活かす第一歩は、自分の投資行動のクセを知ることです。
よくある例
- SNSやニュースで相場が話題になると気持ちが揺れる → 群集心理の可能性
- 損失が出ている商品を手放せない → 損失回避の可能性
対策のヒント
- 群集心理が強い人 → ドル・コスト平均法を使い、毎月同じ金額を自動で投資することで感情に左右されにくくなる
- 損失回避が強い人 → 事前に売却ルールを決めておくことで、冷静な判断を保てる
長期投資では感情をコントロール
市場は短期的に大きく動くことがありますが、感情に流されるとチャンスを逃したり損失を広げたりします。
DC(確定拠出年金)のような長期投資では、短期の値動きに振り回されず、自分の方針をぶらさないことが大切です。
まとめ
- 投資判断には心理的バイアスが影響する
- 自分の傾向を知ることで対策が立てられる
- 感情より計画を優先し、長期的な資産形成を目指そう
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