「棚卸資産評価損」という言葉を聞いて、
「在庫管理を見直したいけれど、意味がよく分からない…」
と感じた方も多いのではないでしょうか。
この記事では、
- 棚卸資産評価損の基本的な意味
- 在庫の評価方法
- 評価損の計算方法
- 在庫の価値が下がるのを防ぐ方法
を、できるだけわかりやすく解説します。
正しく評価損を把握し、在庫管理を改善するための参考にしてください。
棚卸資産(在庫)評価損とは
棚卸資産とは、会社が保有している在庫のことです。
棚卸資産評価損とは、在庫の価値が下がったことによって生じる損失を指します。
通常、商品は仕入れ価格より高く販売するため、在庫があるだけで損失が出ることはありません。
しかし、次のような場合には、仕入れたときよりも商品価値が下がってしまいます。
- 流行が変わって売れなくなった
- 季節が終わった
- 破損や劣化が起きた
- 市場価格が大きく下落した
このように、在庫が売れる前に価値が下がった分が棚卸資産評価損です。
特に評価損が発生しやすいのは、次のような商品です。
- 流行の変化が激しい商品
- 季節限定の商品
- イベント向けの商品
- 市場価格が大きく変動する商品
評価損はいつ計上できる?
在庫は、実際に売らない限りお金の損失は発生しません。
そのため、原則として評価損はすぐに損失として計上できません。
ただし、次のようなケースでは例外的に計上が認められます。
- 災害などで大きな損傷を受けた場合
- 流行に強く左右され、明らかに売れない場合
- 破損・劣化などで品質が落ちた場合
棚卸資産(在庫)の評価方法
在庫の価値を計算する方法には、大きく分けて原価法と低価法があります。
原価法(仕入れ価格をもとに計算)
原価法には、次の5つの方法があります。
以下の共通条件で説明します。
【前提条件】
商品Aを仕入れ
4月1日:10個 × 100円
4月10日:10個 × 120円
期末在庫:8個
個別法
商品ごとに、実際の仕入れ価格で評価する方法です。
最も正確ですが、商品数が多いと管理が大変です。
不動産や美術品など、1点ずつ管理する商品に向いています。
計算式
期末棚卸資産 = 各商品の実際の仕入価格 × 在庫数量
例
期末に残っている8個がすべて
「4月10日仕入(120円)」だった場合
120円 × 8個 = 960円
👉 期末棚卸資産:960円
※どの商品が残っているか分かる場合に使える方法
先入れ先出し法(FIFO)
「先に仕入れた商品から売れる」と考えて計算する方法です。
実際の在庫の動きに近く、
正確さと手間の少なさのバランスが良い方法です。
考え方
「先に仕入れた商品から売れた」と考える
計算手順
- 総仕入数:20個
- 期末在庫:8個
→ 後から仕入れた商品が残る
計算
4月10日仕入分(120円)が8個残る
120円 × 8個 = 960円
👉 期末棚卸資産:960円
平均法
在庫全体の平均単価を出して評価する方法です。
- 総平均法:期首と期中の仕入れをまとめて平均
- 移動平均法:仕入れるたびに平均を更新
平均法(総平均法)
計算が比較的わかりやすく、よく使われます。
計算式
平均単価 = (仕入総額)÷(仕入数量)
期末棚卸資産 = 平均単価 × 期末在庫数量
計算
仕入総額
(100円 × 10個)+(120円 × 10個)
= 1,000円+1,200円
= 2,200円
平均単価
2,200円 ÷ 20個 = 110円
期末棚卸資産
110円 × 8個 = 880円
👉 期末棚卸資産:880円
平均法(移動平均法)
計算式
新平均単価 =(前回在庫金額+今回仕入金額)÷(在庫数量)
計算例
- 4月1日仕入後
100円
- 4月10日仕入後
(100円×10+120円×10)÷20
=2,200円÷20
=110円
期末棚卸資産
110円 × 8個 = 880円
👉 期末棚卸資産:880円
※総平均法と同じ結果になることも多い
最終仕入れ原価法
一番最後に仕入れた価格を、すべての在庫に適用する方法です。
計算は簡単ですが、
価格変動が大きい商品では実態とズレることがあります。
計算式
期末棚卸資産 = 最終仕入単価 × 期末在庫数量
例
最終仕入単価:120円
120円 × 8個 = 960円
👉 期末棚卸資産:960円
※計算は簡単だが、実態とズレる場合あり
売価還元法
原価が分からない場合に使う方法です。
期末棚卸資産=期末在庫の売価 × 原価率
スーパーなど、商品点数が非常に多い業種で使われます。
低価法
原価法で算出した金額と、期末の時価を比べて
低いほうの金額を在庫の価値とする方法です。
つまり、
仕入れたときより価値が下がっている在庫は、
帳簿上も“価値が下がったもの”として扱おう
という保守的な考え方です。
低価法の計算手順【具体例】
【前提条件】
- 評価方法(原価法):先入れ先出し法
- 期末在庫数量:10個
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 原価法による評価額 | 1,200円 |
| 期末時価(販売可能価格) | 950円 |
原価法で在庫金額を出す
原価法評価額 = 1,200円
期末時価を確認する
期末時価 = 950円
※期末時価とは
「通常の販売価格 − 販売にかかる費用」
で考えます。
低い方を採用する
1,200円(原価) > 950円(時価)
→ 950円を採用
評価損を計算する
棚卸資産評価損 = 1,200円 − 950円
= 250円
👉 期末棚卸資産:950円
👉 棚卸資産評価損:250円
切放し法と洗替え法の違い
低価法には、評価損を「翌期にどう扱うか」で
2つの方法があります。
切放し法(きりはなしほう)
考え方
一度下げた価値は、もう元に戻さない
処理イメージ
- 今期:評価損を計上
- 翌期:下げた後の金額が新しい原価になる
例
- 当初原価:1,200円
- 低価法適用後:950円
→ 翌期の帳簿価額も 950円のまま
📌 実務で一般的に使われる方法
洗替え法(あらいがえほう)
考え方
毎期、原価と時価をゼロから比べ直す
処理イメージ
- 翌期に、原価にいったん戻して再評価
- 時価が回復すれば、評価損が消える場合もある
例
- 翌期の時価:1,100円
- 原価:1,200円
→ 低い方の 1,100円 を採用
📌 理論的だが、実務ではほとんど使われない
棚卸資産(在庫)評価損の計算方法
評価損は、次の式で計算します。
棚卸資産評価損 = 在庫の評価額 − 実際の販売価格
例
- 在庫の評価額:105円
- 販売価格:90円
この場合、
1個あたりの評価損は15円です。
在庫が10個あれば、
15円 × 10個 = 150円
が棚卸資産評価損となります。
在庫の価値減少を防ぐには
在庫の価値が下がる最大の原因は、**持ちすぎ(過剰在庫)**です。
そのため、次の点が重要になります。
- 今どんな在庫が、どれだけあるかを正確に把握する
- 需要を予測し、適切な量だけ仕入れる
- 作業手順を統一し、ミスを減らす
マニュアル整備や在庫管理システムを活用すると、
在庫状況が見える化され、余剰在庫を防ぎやすくなります。
まとめ|棚卸資産評価損を理解して、適切に管理しよう
棚卸資産評価損とは、
在庫の価値が下がったことによる損失です。
評価損を正しく把握するには、
- 在庫の評価方法を理解する
- 正確な在庫管理を行う
ことが欠かせません。
在庫管理を改善したい場合は、
在庫管理システムの導入も有効な選択肢です。





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